ここにどう建てるのか〜美杉の石場建ての家

森の中に建つ家

とある住宅が先日竣工した。場所は森の中、下から見たら清水寺?って思うような石場建ての建物だ。この家は施主を中心に建築家・大工・その他職人のチームで作り上げたものである。しかし、ここに到るまでは数多くの紆余曲折があったのだ。

どこに建てるのか

ここは南西向きの斜面にある。施主様ご家族は、そこに建つ築100年ほどの古民家にお住まいなのだが、その建物の老朽化と、後ろの山に建物が近すぎる事に思うことがあり、新しく家を建てたいという考えを持たれていた。ここの土地はかなり広いが斜面が多いので、建てられる位置は自ずと限られてくる。しかも同じ敷地内でお店を経営されていて、その店からの眺めを遮ることは出来ないので、どう建てるかが非常に難しいところだ。

建築家大室氏

この難問に立ち向かったのが、大室アトリエの大室佑介氏だ。彼は私設美術館を主宰する文化人でもある。彼の設計概念について、私には到底全てを把握することは出来ない。ただ分かることは、非常にシンメトリックで美しい建物を設計する建築家という事だ。

彼の事務所にある数々の模型。ここは秘密基地みたいでいつも行くのが楽しみな場所だ。

究極のセルフビルダー

そしてもう一人、この建物を建てるに当たって重要な役割を果たしたのが、施主様ご夫婦である。ま、当然といえば当然だが、彼らはただの施主ではない。旦那様は人気レストランを経営する優れた板前なのだが、実は、大工工事から左官、水道工事までなんでも自分でやっちゃうセルフビルダーなのだ。お店の建築の時もほとんど自分で作ってしまった。何よりセンスが抜群にいい。そして奥様は土を使った造形作家さんである。お店の建築から経営にも奥様のエッセンスが散りばめられていて、それがまた独特の世界観を作り出しているのだ。

彼らが経営するレストランは、客足が途絶えない人気店だ
数ある奥様の作品の一つ。

そんな彼らとの家作りが面白くない訳がない。次からは彼らとの家作りの一端をご紹介していく。

つゞく

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大工歴30年、小さな工務店社長が綴る独断と偏見のBlog。 《木神楽》青山高原の麓に工房を構え、木と土の家・古民家再生・タイニーハウスなどを主に手掛ける。お役に立てることがあれば、何でもご相談を。