古民家再生の意義って?古い家との付き合い方

古民家が好きだ。古民家には、年月を経たものならではの魅力がある。昔に建てられた古民家は、当然ながら本物の素材で作られている。それらは古くなるほどに深みが増すのだ。昨今のクロスや新建材で作られた家は、きれいなのは表面だけで、それが剥がれたら見る影もない。

四日市市での古民家再生事例「町家スタジオ侶居」

古民家のキッチンをリフォーム

さてここからは最近の古民家再生事例を紹介しよう。とあるお施主様が古民家に住む決意をされた。築70〜80年、納屋や離れも付いた広い家だ。昭和のリフォームで水回りは一新、アルミサッシも入っていて、すぐにでも住める状態である。

外回りは、アルミサッシに交換されていた。これはこのまま使う。
今回の改装のメインであるキッチン。新建材でリフォームされており、古民家らしさはない
キッチン隣の部屋。ここもリフォームする

ここで私たちが手掛けたのは、主にキッチン周りだ。昭和のリフォームで貼られた新建材を引っぺがしていくと、以前の漆喰壁が見えてくる。

天井を取ると立派な丸太梁。漆喰壁は大きく割れていて補修が大変そうだ

天井をめくると、丸太の梁が露わになり、広い空間が現れた。つし二階にまで繋がる大きな吹き抜けだ。ここはお客様の希望で、そのまま見せることにした。

床にはいつもの30mm杉フローリング。杉は柔らかくて傷つきやすいが、反面足触りがよく、冬でも冷たくない。壁の漆喰は損傷がひどく、電気配線スペースも必要なので、新たに上に壁下地を作り、そこに漆喰を塗った。

漆喰とは、石灰にスサとノリが混ぜられたものを言う。漆喰壁は空気中の二酸化炭素と反応し、長い時間を掛けて硬化してゆく。
左官工事は、コテの押さえ方、水引き、天候によって仕上り具合が変わる。素材との対話が重要だ。

天井は屋根なりに断熱材を入れ、羽目板を張る。玄関との間仕切り建具は、木神楽の在庫でチョイスした。

しかし、私たちが手をかけるのはここまで。あとは施主様のセルフビルドだ。畳の部屋を板間にし、キッチンも手作り。あとは住みながら、楽しみながら少しづつ手を入れていかれるとのこと。どうなっていくのか、私たちも楽しみである。

では次回は、その仕上がりをご紹介したい。

つゞく

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大工歴30年、小さな工務店社長が綴る独断と偏見のBlog。 《木神楽》青山高原の麓に工房を構え、木と土の家・古民家再生・タイニーハウスなどを主に手掛ける。お役に立てることがあれば、何でもご相談を。