建て前が終わったらまずやること〜木と土の家建築中

貫を入れ、クサビで留める

貫とは柱を貫通させる部材のことだ。その貫を何段にも柱に通すことによって、建物の剛性を出す。ここがとても重要で、地震時にはそれらが柱にめり込むことによって、建物は倒れないのだ。

よく古い空き家で倒れそうになっている家を見掛けると思うが、ものすごくコケていても、実はなかなか倒壊しない。なぜなら中の貫が効いているからだ。

そんな貫を通したら、三角に作ったクサビでしっかりと締める。ここもなるべく緩まないよう、工夫が必要。それが出来てようやく土壁下地に取り掛かれるのだ。

えつりを掻く

土壁下地は、竹を編み込んで作るのだが、それを「えつりを掻く」という。さてこの家のえつりを掻くのは、お施主さんなのだ。

えつりを掻き始めたところ。

セルフ施工でえつり掻き

と言っても素人のお施主様、まずは土壁がどんな作業で作られるのか理解する必要がる。そういうことで、うちの現場で何度もお手伝いや見学をしてもらったのだ。

そして、いよいよ自分の家の土壁をすることになった。材料の荒壁は、現場で1年以上前から寝かして、竹は竹藪から切り出し、割って準備した。左官屋さんの指導のもとでだが、全てお施主さん自らやってのけた。もちろん普段の仕事もあるので、休みの日とかを利用してだ。

自分の家のえつりを掻く施主様。じっくりと竹と対話し、素晴らしい時間を過ごせた、とおっしゃっていた。

セルフ施工は時間が掛かる

お施主様は真面目にじっくりと取り組む方で、えつりも一つ一つしっかりと編まれたものが出来上がっていった。しかしなかなか進まない。施工は、休みの日と夜だけだから当然である。施主様は最後までやりたかっただろうし、我々もやってほしかった。しかし後々の工期のことを考えるともうタイムリミットであった。途中から、左官屋さんにも入ってもらうことになった。

K山左官が入り、一気にスピードアップ。

ということで、セルフ施工には、本当に充分な期間をみておかなければならないのだ。


つゞく

大工歴30年、小さな工務店社長が綴る独断と偏見のBlog。 《木神楽》青山高原の麓に工房を構え、木と土の家・古民家再生・タイニーハウスなどを主に手掛ける。お役に立てることがあれば、何でもご相談を。