この家はとても小さい。小さいながらも手を抜かず、普通にしっかりと断熱してあるので、冷暖房はよく効くはずだ。
何より、冬は南面の大きな開口部から日差しがバッチリ入るので、昼間は無暖房でいけるだろう。
夏は、とにかく風通し重視だ。
リビングから洗面・玄関スペースに風が抜けやすいよう、室内高所にも開閉式の通気窓を取り付けた。
照明について。
一つとして高価なものはない。うちの在庫のアンティーク器具やシンプルな照明器具を取り付けた。
全てはled電球であるが、電球色を選んである。
無垢の木の家には、温かみのある電球色がよく似合うのだ。
番外編
外構と植栽施工は、津市丸の内で花屋を営みながら外構工事も請け負う、T.spaceの尾崎さんだ。
実はここのお施主様は、尾崎さんからのご紹介であった。
人の繋がりに感謝である。
web内覧会終わり
では、内部の説明をしよう。
玄関を入ると、そこは、こぢんまりとした玄関ホール。
ちなみに、この家の内装は、杉板と漆喰。木製建具は全て古建具を再利用している。
通常土間になるところは、水に強い杉の赤身板張り。
そして正面のガラス戸を開けると、サニタリールームだ。
shigezo氏が、狭いスペースながらも、トイレ・洗濯・洗面・脱衣スペースを上手に配置設計してくれたところである。
ここは一坪を少し切るくらいの広さだが、使ってみるとちっとも狭さを感じないのだ。
ただ、この洗面台は、壁の厚みを利用して少しでも部屋が広く使えるように作った。
奥に見えるユニットバスは0.75坪タイプ。広すぎず、狭すぎずのちょうどいい寸法。
そして玄関ホールから左のガラス戸を開けると、そこがキッチン・リビングスペースとなる。
つゞく
この家では、ロフトを取り付けるのも重要なミッションの一つである。
ロフト、屋根裏部屋。
それは、本来の部屋ではなく、通常は隠される天井裏スペースを利用して作られる。
そこは、基本的に勾配天井であり、狭い。
しかしながら、そこは非日常的空間で、狭いながらも隠れ家的であり、秘密基地っぽくもあり、大人も子供もワクワクするスペースになる。
もちろんわたくしの自宅にも、広大なロフトスペースが作ってある。
今まで木神楽で建ててきた家のほぼ全てにも、ロフトスペースは取ってある。
リフォームで、ロフト付き部屋を施工した例
新築でもロフト付き
〝タイニーハウス小さく住む家〟にも、もちろんロフトはある。
そして、もちろんこの〝海が見える山の家〟のお施主様ご家族にとっても、ロフトスペースは夢の空間であり、今回何としても作らなければならないものだ。
しかし、そこには難関が待ち受けていた。
邪魔なんて言ってはいけない、構造的にはとっても重要な梁だ。
ロフトを取り付けるのは、吹き抜けにした元和室の部屋。
そこには瓦屋根を支えるべく太い松丸太が何本も入っていて、通常ならロフト空間は取れない。
しかしお施主様の夢を叶えるべく、我々木神楽スタッフは考えに考えた。
ロフトの高さは、高すぎても下からのアクセスが良くないし、低すぎると下の部屋を圧迫する。
そこら辺りを考えて、高さを設定する。ここでは、前の和室のちょうど天井あたりの高さに、ロフトの床を設定した。
ただこれだと、床のすぐ上を丸太梁が横切り、いまいち使い勝手はよくない。
そこで、さらに奥に一段上げて、ロフトを増設した。
奥の段は、ちょうど腰を掛けられる高さ。
丸太の梁の上に床を上げたので、あまり邪魔にならない。
こうして、少々変則的ではあるが、夢のロフトスペースが出来上がったのだ。
つづく
スモールハウスの建て前を控えた、とある秋晴れの日。
外壁の板をどう貼ろうとかの話になり、近くで以前建てた家を見に行くことになった。
メンバーは、私とスモールハウスのお施主さん、それに、最近よく木神楽に逗留しているS設計士の3人だ。
目指す先は、白山町の家具工房FROSCH。
ここが建てられてから、早7年が経つ。施主は家具職人なので、当然ながら内装工事は施主施工である。
ここに7年前の写真があるが、目的はこの外壁だ。
ここでは、ウッドロングエコという、塗料ではないが、木材を保護するものを外壁に塗ったので、その後の経過を見るのが目的である。
突然の訪問にも関わらず、施主である家具職人の森下氏は、快く我々を迎えてくれた。
そして7年経った外壁を仰ぎ見る。
たったの7年とは思えないほど、全体的に黒くなり、すでに古民家の様である。
何とも味わい深くなっているではないか。これこそ、古くなって美しくなる家であろうと思う。
使っているのは、杉の赤身板なので、水が切れるこの状況下ではそう簡単には腐らない。
さて、外壁だけでは飽き足らない我々は、森下氏の許可も得て、家の中に足を踏み入れることになる。
そこにはまるで別世界、そう、FROSCHワンダーランドが広がっていたのだ。
続く