さて、伊賀の石場建ての家は、その名の通り石場建てだ。その石をどう据えるか、柱との取り合いはどうするのか等々、Shigezo氏は何枚も図面を描き、その度ごとに我々職人と打ち合わせて、連日頭を悩ませ続け、そしてとうとう仕様が決まって、本工事に入る運びとなる。
Shigezo氏のWebサイトはこちら→シンプルな杉の家
石場建てにする理由
さて、これは前回にも述べた通り、それこそが環境負荷の低い家づくりだからである。たくさんのコンクリートを使うのは大変なエネルギーを消費している。そして石を据えてその上に家を建てるのは、昔ながらの伝統的な家づくりだ。ハイテクではない、ローテクである。そのローテクこそが持続可能な社会での家作りとなりうる。そして耐震上も決して不利にはならない。石の上に固定せず建てることは、ローテクな免震構造となる。
もう一つ、地面をコンクリートで覆わないことにも意味がある。大地の呼吸を止めないようにすることだ。それについてはまた後日詳しく書きたい。
基礎石が搬入される
時は2017年初冬。いよいよ基礎工事がスタートした。石を据えるのは、いとか工務店の今西さん。ニックネームはユウ君だ。
ユウ君は木神楽で建てた松坂の石場建ての家のお客様。土木会社の凄腕オペレーターであったが、現代土木に希望を無くし、自然と向き合う脱コンクリートの土木会社を一人立ち上げる。この伊賀の現場は、彼が独立してからの初舞台でもある。
ユンボに乗らせたら、おそらく右にも左にも出る人はいないだろうと思われるくらい、まるで自分の手足のように使いこなす。
現場に掘られていく穴、そして搬入された焼き杭。これから何が始まるのかは次回に続く。
内覧会続編、リビングから。
ウッドデッキに面したダイニング・リビングスペース。
ここは5畳大の広さ。天井が高くなった部分にはロフトが乗る。
いつも使う可動式の棚。
キッチンは、考えに考えた末の、超シンプルなカタチ。
いかにコストを掛けず、しかし使い勝手よく、カッコよく作れるか。
実際は、結構コストが掛かった。
物が片付くよう棚も配置。見せる収納が基本となっている。
キッチンの反対側、ロフトの下にあるのが寝室スペースになる。
ここは、約2畳大ある。
スノコで床を上げて、その下は収納スペース、足元はクローゼットだ。
古建具の簾戸を閉めると、風は通すが適度に視線を遮ることができる。
ここも、広すぎず狭すぎず、快適である。
そして、梯子を上がればロフトスペース。
普段使わないものを上げておいたり、お客さんが来た時には、臨時の就寝スペースとしても利用可能。
尚、ここはほとんどの構造材を、柱材である105角を使って組み上げた。
それは、いかに構造をシンプルにし、同じ材料で作ることによるコストダウンを考えてのこと。
このロフトの梁も、105角を二重に重ねた複合梁となっている。
つゞく
まず外観から見ていこう。
南面に深く突き出た軒により、多少大きく見えるが、6.25坪の極小住宅だ。
屋根は、シルバーカラーのガルバリウム波板。安価で施工しやすく、さらに波の部分が通気層になって一石二鳥である。
特徴ある外壁は、杉の赤身板を細かくうろこ状に貼ったシダーシェイク。
板は、3重重ねで雨の侵入を防ぐ。張り方によって色々表情を変えることができる。
この外壁、実は私自身が永年やりたかった事だ。この小さく住む家でついに実現できてとても嬉しい。
家づくりは、お客様の夢の実現であるが、それに私達も乗っからせてもらい、作り手として楽しませてもらっている。
そして正面、南のウッドデッキ。
深く突き出た軒により、雨の日でも快適である。もちろん、壁の間接照明でナイトシーンもバッチリだ。
さらにこの軒、部屋への日差しを夏は防ぎ、冬は目一杯取り込む。
ウッドデッキ両側の袖壁。
この湾曲した両袖壁は、屋根を支えるのはもちろん、夏は東日・西日を遮り、冬はウッドデッキへの北風の回り込みを防ぐ役割を担う。
ウッドデッキ面の外壁は、オリジナル土壁仕上げ。
土だけでは壁への接着力がないので、モルタルとボンドを併用。
玄関ポーチの屋根も大きめ。
玄関ドアもポーチも木製なので、これくらいは必要だ。
つゞく
竣工から半年が経った小さく住む家。
庭の緑も綺麗に色づいてきたので、ようやく竣工写真を撮影する。
と言っても、もうすでに住まわれているお家。
お施主様にも、片付けなど色々無理をお願いしなければならない。
梅雨入り前の撮影当日は雲ひとつない天気に恵まれる。
写真を撮るのは、いつもの加納準氏。建築専門のカメラマンだ。
→ 加納フォト
加納氏紹介編
彼とはサルシカ隊仲間であるが、そんなことは置いておいて、彼はとにかく仕事が早い。
撮影は、だいたい夜まで掛かるのだが、そのまま徹夜で画像処理を行い、翌日には写真が納品されるのだ。
ちなみに、彼は植物についての造詣も深い。
暇があったら自邸の庭を弄っていて、ガーデニングの腕前もなかなかのもの。
庭の話をするときの彼は楽しそうだ。
今回の撮影でも、庭木の手入れの事、枯れかけた鉢植えの再生など、色々お施主様にアドバイスをされていた。
さて、撮影は午後から始まり、夕方の中休みを挟んで、夜8時過ぎまで掛かった。
お施主様には、物や家具のの移動など、撮影用のアレンジで大変ご面倒をお掛けした。
また、撮影用に小テーブルや椅子などの家具や小物を、近くの家具工房BROWNさんでお借りした。
どちらもご協力ありがとうございました。
次回は、ダンディカメラマン撮影の写真を見ながら、この家のweb内覧会なのだ。
つゞく